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松尾卓次の島原の歴史 Q&A 其の一六

松尾卓次先生におかれましては令和6年3月1日ご逝去されました。心よりご冥福をお祈りいたします。

今回も、それぞれの時代の島原半島にまつわる歴史クイズを解きながら、「島原の歴史」を探求してみましょう。皆さんも一緒に考えてみてください。
では、問題です。

Q1 国見町の栗谷川丘陵地先端部にある、県指定史跡となっている横穴式古墳の名は?
Q2 島原市高島町にある、島原大変の犠牲者を供養するため島原藩によって建てられた御堂の名は?
Q3 島原から加津佐まで、南目の鉄道が全線開通したのは西暦何年?
Q4 観光ブームに乗って島原温泉事業がスタートしたのは西暦何年?

A 1 高下古墳(こうげこふん) ― 高下古墳 ― 雲仙市国見町多比良地区 ―

国見町の南部を流れる栗谷川丘陵地先端部にある古墳で、鬼の岩屋といわれてきた。
県指定史跡。
6世紀中頃から築かれ、長期にわたって活用された横穴式古墳である。
墳丘は失われているが、直径約18m、高さ約4mと推定される。
今では石室が露出している。
全長6.3mの石室があり、奥室は3.3m、2.8m。
その前に長さ2.4m、幅1.6mの羨道がある。
高さは奥室で2.4mもあって、天井や壁には縦3.5m、横2mもの巨石がいくつも使われている。
奥室の内部は、奥の方と左右に3区画されていて、3体の被葬が考えられる。
親子孫3代にわたり北部に勢力のあった豪族を埋葬したものか。
出土品として、銅製装飾金具、金銅製指輪、環玉などの装身具類。
刀子、直刀、金銅製鍔、鉄鏃などの武具類。
轡、円形鋲などの馬具類。
土師器や須恵器などの土器類もあって、この豪族の勢力の大きさを物語っている。
この被葬者は、大和王権から任命されてこの地にやってきた国造と思われ、島原半島一円の支配者であっただろう。

高下古墳

 

A 2? 回向堂 ― 城下町の復興 ― 島原市 ―

1792(寛政4)年の眉山崩壊で、城下町の古町と新町は全滅した。
しかし生き残った町人たちは復興に乗り出し、その年の8月には「棹入れ」をして町と屋敷の区画を測り、地所を確定した。
また11月から翌年の3月には白土の大池から排水路を仕上げ、再び町を復旧できた。
それで大変前とほぼ同じように町づくりができたのである。
白土町の東側を通っていた海岸線は、海に浮かんでいた松島、天の島を取りこんで大きく東へ移動した。
土砂で埋まった湊の入江は消滅し、その跡地に新堀町(中堀町)と江東寺、さらに東に弁天が生まれた。
桜町から新町の町筋は大変前と変わりなく復元し、その西側の寺社群も元通りになった。
流山で生まれたせき止め湖・「白土の大池」は島原の水がめとなった。
湊の機能は眉山直下の今村に移り、その入江を取り込んで蛭子町、津町、有馬船津、白土船津、浦田船津などが生まれた。
さらに南に南風泊などの湊ができた。
その後向島湊や湊新地ができて島原湊の中心として賑わう。
いたるところに大変時の跡が残っている。
繁華街のど真ん中に大きな供養塔が建っている。
ここは水頭といって波止場で、大変賑わっていたとろ。
多くの町人が犠牲になったので、今でも供養祭が営まれている。
高島町には回向堂がある。
この辺一帯に船倉武士(水軍)がいたところで、これまた被害が大きかったところ。
藩庁は犠牲者を供養してこの御堂を立てた。

回向堂

 

A 3 1928年 ― 島原“4”鉄道 ― 島原半島 ―

1913(大正2)年に島原鉄道が諫早・島原湊間に全通したら、次は口之津へ通じる南目鉄道の話が持ち上った。
しかし第一次世界大戦などの影響で計画は進まなかった。
1918(大正7)年、不知火鉄道創立委員会が開かれて、建設費70万円で島原湊・口之津間に鉄道を敷設することを決めた。
翌年、口之津鉄道創立総会が開かれて、社長に植木元太郎を選びスタートした。
1922(大正11)年にまず島原湊・堂崎間が開通、1928(昭和3)年には加津佐まで全線36kmが開通した。
その後1943(昭和18)年、戦時体制下に島原鉄道に吸収合併された。
島原鉄道創立時に、愛野・小浜間を支線として同時開通の計画もあったが、財政上の理由で立ち消え、やっと1918(大正7)年に小浜軽便鉄道目論見書がまとまる。
18.6㎞、建設費35万円と打ち出した。
しかし、小浜・千々石両村の意見が対立して別々の会社が発足した。
1920(大正9)年温泉軽便鉄道創立総会が開かれて、1923(大正12)年には愛野・千々石間9kmが開通した。
小浜鉄道は1920(大正9)年に創立総会を開いて、1927(昭和2)年に千々石・小浜北野間8kmが開通した。
このように島原半島には一時期4つの鉄道が走り、鉄道の時代を迎えていた。
温泉・小浜両鉄道は、肝心の温泉湯治客が伸びず、また自動車との競争で厳しい経営を強いられていた。
1933(昭和8)年、両社は合併して雲仙鉄道となるが、1938(昭和13)年には廃線となった。
【島原鉄道「島原鉄道の歩み」】【千々石町「千々石町郷土誌」】

大三東駅停車中の島鉄列車

 

A 4 1967年 ― 島原温泉 ― 島原市ほか ―

1967(昭和42)年4月、観光ブームに乗って島原温泉事業がスタートした。
1960(昭和35)年に雲仙・島原間有料道路が開通、また天草5橋が開通してどっと観光客が島原・雲仙へ押寄せた。
1964(昭和39)年には島原城天守閣が復元され、さらに拍車がかかった。
島原市では1960(昭和35)年、元池に温泉をボーリングして旅館やホテルの一部に供給していたが、増える観光客に間に合わず給湯量を増やす必要があった。
そこで観音島に新たな泉源を求めて発掘し、この年10月に温泉事業を開始したものである。
これでお山の温泉・雲仙、海の温泉・小浜とこの島原温泉と、島原半島に3つの温泉が並び立ち、全国から観光客を呼び込んだ。
今では温泉が周辺部へも広まり、南有馬町・原城温泉が1967(昭和42)年から、瑞穂町の千年の湯が1996(平成8)年、同じく有明町にも有玉温泉が開かれた。
2004(平成16)年には布津町に健寿の湯が開かれるなど、島原半島を取囲むようには温泉のネットワークができている。
【島原市「島原温泉事業計画書」】【島原新聞「昭和35年記事等」】

島原温泉源(島原市湊町)

先生の紹介

松尾先生松尾先生は昭和10(1935)年島原市生まれ。
島原城資料館専門員、島原文化財保護委員会会長。
『島原の歴史については松尾先生に聞け』と言われる島原の生き字引的存在。
著書に『おはなし 島原の歴史』『島原街道を行く』『長崎街道を行く』など。

過去の記事はこちら。

松尾卓次の島原の歴史 Q&A 其一五
松尾卓次の島原の歴史 Q&A 其一四
松尾卓次の島原の歴史 Q&A 其一三
松尾卓次の島原の歴史 Q&A 其一二
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