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OPINION「平成噴火災害から生まれた無人化施工技術『UNZEN』国土交通省雲仙復興事務所長 田村 毅」

田村 毅

私が勤務する国土交通省雲仙復興事務所は、1990年11月から始まった雲仙・普賢岳噴火災害からの地域の復興を目的に1993年4月に設置され、雲仙・普賢岳から発生する土石流から地域を守る砂防事業などを行っています。
そして当事務所の砂防事業では、いつ火砕流や土石流等に襲われるかわからない場所でも、作業員の安全を確保しながら工事を実施できるように、無人化施工技術の開発が進められてきました。
最初は、火砕流が到達する危険のある区域内に造られている遊砂池から土砂を除去する工事を対象に、民間の開発技術を広く公募することから始め、カメラで捉えた映像をモニター画面で見ながら、遠隔操作にて建設機械を操縦して土砂掘削や運搬を行う無人化施工技術が開発されました。
次に、拡大する一方の土石流被害を防ぐために、さらに上流の危険な場所で、大規模な砂防堰堤を早急に築造しなければなりませんでした。
当時の関係者は頭を悩ませながらもこの難問に取り組み、遊砂池から土砂を除去する工事で開発した無人化施工技術に、新しい発想のコンクリート打設方法を組み合わせ、日本初(おそらく世界でも初)の無人化施工による砂防堰堤の築造を行いました(水無川1号砂防堰堤、1998年2月完成)。
その後も、さらに上流の工事にチャレンジしながら技術開発が進められ、雲仙・普賢岳の砂防工事現場で必要となるほとんどの工種が無人化施工で施工出来るようになるとともに、新しい情報通信技術等と組み合わせて作業効率向上や超遠隔操作などを可能とする多くの技術が生まれました。
雲仙・普賢岳の砂防事業の中で生まれ、発展していった無人化施工技術は、全国各地の災害現場で活用されているほか、現在国土交通省が施工合理化のための技術開発として進めているi-Constructionの要素技術としても活かされています。
昨年のことですが、古川隆三郎島原市長から、「この地で生まれた無人化施工技術のことを、この地域の地名にちなんで『UNZEN』というローマ字横文字で呼ぶことにしたらどうか。」と提案されました。
「『UNZEN』が世界の土木関係者の間での共通語となれば、無人化施工技術発祥の地として雲仙や島原半島を世界にアピールすることができる。」ということでした。
当事務所はこの古川市長の提案に賛同し、『UNZEN』という愛称をモチーフにしたロゴマークを作成して、本年3月から、現在稼働中の無人化施工機械に貼り付け、その姿を各方面に情報発信しているところです。

 

田村 毅(たむら・たけし)

田村 毅
プロフィール
1968(昭和43)年神奈川県生まれ。
1993年建設省(現国土交通省)入省。
国土交通省本省や地方機関の砂防関係部署を中心に勤務。
2018年4月から現職。
1997年度に雲仙復興工事事務所(当時の名称)に1年間勤務したことがあり、島原市居住歴は前回と今回を合わせて3年目。

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