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2.172016
元気企業『小浜食糧株式会社』
長崎銘菓「クルス」をベースに長崎の観光振興に貢献したい
長﨑の観光土産品のひとつとして、すぐに思い浮かぶのが“クルス”。
このクルスに加えこれも定番人気商品の“ポンパティのワッフル”などを製造販売しているのが小浜食糧だ。
創業が1932年(昭和7)というから半島に本社を置く菓子製造販売業のなかでも老舗企業のひとつだ。
当時、賑わっていた雲仙の登山道近くにある温泉郷・小浜で「湯せんべいの製造販売に加え、小間物や雑貨なども扱っていた商店の経営から始まった」(金澤昌江社長)という。
しかし、当時から隠れキリシタンの歴史をもつ長崎県にあって、その貴重な歴史を何とか活かせないか、という思いは秘められ続けていた。
昭和39年に“クルス”誕生
戦後、観光復興の流れに乗り業容を拡大していった同社だが、試行錯誤の末「長崎銘菓(当初はキリシタン銘菓)クルス」が誕生したのは1964年(昭和39)、前回の東京オリンピックが開催された年だ。
全国の銘菓を食べ歩き、“キリシタンの街長崎を象徴するような銘菓を創りたい”と言う同社の創業者によって、「せんべい+ショウガ+チョコレート」の斬新な組み合わせで、“和でも洋でもない”独特の食感を追求し開発されたものだ。
商品名の“クルス(十字架)”はポルトガル語だが、現在まで受け継がれている「十字架と可愛いい修道女の特徴的なデザインは文化功労者でもあった洋画家の重鎮、鈴木信太郎氏が創業当時に描いてくれたもの」(金澤社長)というから、今ではそのデザインそのものにも価値があるユニークなものだ。
そのクルスだが、発売当時は長崎市内のJR駅構内のキヨスク(Kiosk)やホテル・旅館の売店で販売を始め、次に1975年(昭和50)に開港した長崎空港でも取扱いがはじまり次第に販路を拡げていったという。
現在は販売先も地元長崎県内を始め高速道路売店、福岡、大分などの九州地区から一部関東や関西などにまで徐々に広がっており、福岡の阪急や三越、大阪(アベノハルカス)の近鉄百貨店など有名百貨店や東京の四ツ谷などでも販売されている。
今も各地で開かれる県の物産展やスーパーマーケット・トレードショーなどの商談会にも積極的に出展中というから、今後もクルスを目にする機会は各地に一層増えていくだろう。
多彩な商品ラインに「百年生姜ワッフル」シリーズが登場
一昨年に発売50周年を迎えた“長崎銘菓クルス”だが、ワッフルや他の商品も含めて現在は全部で約80種類の商品を発売しており、“しあわせクルス”や“なんでんよ菓セット”など、社員みんなで考えたというネーミング自体も面白くて楽しめる。
50周年を記念して、「復刻版クルス缶」と「景観クルス」は発売されたが、なかでも「景観クルス」はユニークだ。
商品のパッケージ面に長崎の主要観光名所を印刷した「観光編」のほか、龍踊りや川船などの「くんち編」も観光客に人気だという。
「発売3周年目にあたる今年は、観光編の新しいパッケージには3月末に決定する長崎写真コンクールの入賞作品からも選ぶ予定」(金澤社長)と意欲も十分だ。
同社では昨秋、同じ島原半島で100年以上も前から生姜を作り続けている松本農園(島原市)と1年をかけてコラボ企画で商品化を実現した「百年生姜ワッフル」シリーズを発売した。
“豆乳”、“しあわせ生姜”、“紅茶”、“合わせ味噌”など6種類の商品タイプを揃え、健康にも優れた生姜の味をそれぞれ個性豊かに引き出している。
健康志向にも合致した商品として今後の販売戦略にも大きなインパクトを与えそうだ。
生姜にも見られるように、このほか同社商品の原料には、じゃがいもや玉ねぎ、米粉など地元産の原料が数多く使われている。
“商品が売れれば売れるほど地元の生産者も潤う”という、文字通り“農・商・工”連携の地域モデルとしても参考になる会社だ。
今後の商品開発や販売戦略に一層の活躍が期待される
- ポンパティの店舗
- 金澤昌江社長
- 本社クルス製造工場
小浜食糧株式会社
[雲仙市小浜町北本町14-15]