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OPINION「漫画家 小西紀行」

妖怪ウォッチのパワーを“しまばらん”にも引き継がせたい

今や日本だけでなく海外でも知られるコンテンツとなった“妖怪ウォッチ”ですが、私自身がそのプロジェクトに関わっているとは今でも信じられません。

私自身は小さい頃から漫画には興味があったのですが、実際に職業として漫画を描いていこうと考えていたわけではなく、突如思い立って高校卒業間近に漫画の専門学校(福岡市)に入学を決めたのです。
夢を叶えるとか、一旗あげてやろうというような大きな志はなく、現実から少し逃避し、遊んでやれという気持ちが強かったような気がします。

でも、当時は若気の至りというか勘違いというか、自分は絵がうまいと思っていたので、「何とかなるはずだ」という根拠のない自信を持っていたのも事実です。
実際、専門学校在学中に初めて描いた漫画で担当の編集者さんがついてくれたのでさらに調子に乗りました。

そのため専門学校に通っている期間はとても楽しく過ごせました。
今思い出してもあの2年間は人生で一番遊んだ自由な時期でした。

しかし、遊んだツケは回ってくるもので、卒業後はデビューどころか、せっかく目にかけてくれた担当編集者をうならせる作品を生み出すこともできず、漫画家さんのアシスタントとして働きつつも自分の作品を描くことはなく、気がつけば東京に来て2年が過ぎ、無意味に年齢を重ねたことを後悔しました。
そこで一念発起し、家にいる時はほとんど点けっぱなしだったテレビを処分し、友達とも交遊を断ち、当初風呂なしだったアパートからお金もないのに風呂つきのアパートに引っ越しました。
カッコよくいうと自分を追い込み、家にいる時はほとんど自身の作品を描き続けました。
そして、上京して3年でやっとデビュー作を生みだす事ができ、その後は順調に短編も数本発表し初連載も獲得でき再び調子に乗りました。

しかし、調子に乗るとやはりつまずくもので、この初連載は半年で終了という悲しい現実にも直面しました。
再び鳴かず飛ばずの時期を2年ほど過ごした後、別の出版社数社に持ち込みを始めました。
その中のひとつの雑誌が現在もお世話になっている「月刊コロコロコミック」です。
そして、その時私の人生を大きく変えることになる一人の編集さんと出会う事が出来ました。

その編集者さんにはコロコロコミックの漫画の基礎を一から叩き込まれました。
それまで描いたことがなかったギャグ漫画を描くよう勧めてくれたのも、その編集者さんでした。

おかげで再び漫画家として生活していけるようになりましたが、一度失敗もしているので今度は調子に乗ることはありませんでした。
運命を変えた編集者さんとの出会いはもちろんですが、やはり調子に乗らずに地道に仕事をし続けた事が人生を好転させるキッカケになったように思います。
そして、2012年には漫画「妖怪ウォッチ」が始まり、さらに仕事が好転するという流れにつながったように思います。

実家に飾られた作品など

実家に飾られた作品など

この妖怪ウォッチは大きなプロジェクトとして始まりました。
私の取り柄は漫画を描くことしかできないので、それまでに学んだことを全てぶつけている作品です。
その後、ゲームの発売やアニメの放送開始などで漫画の知名度も上がりヒット作と呼ばれるようにもなりました。
私も大きなプロジェクトの土台作りに多少はお役に立てたのではないかと思っています。
そのご褒美と思っていますが、「第38回講談社漫画賞」・「第60回小学館漫画賞」をはじめ数々の賞もいただくことができました。

また、昨年は島原市から公式キャラクター制作の依頼もいただき、多少、プレッシャーもありましたが、市長と市の担当チームから“湧水”というテーマをいただいていましたので、私の中で湧水といえば武家屋敷のイメージが強く、その武家屋敷の売店でも売っていた大好きな“かんざらし”をモチーフにしたキャラクターとして島原守護神“しまばらん”が誕生しました。

しまばらんは、昨年11月のキャラクター発表以来、皆様にご好評をいただいているという噂を耳にしてはいましたが、東京にいるとあまり実感ができずにいました。
しかし、今年帰省した際に出初式で市民の皆様の前に現れた“しまばらん”がカメラを向けられ、子ども達から大声で名前を呼ばれている姿を見て初めて実感することができ嬉しく思いました。

この“しまばらん”は、申請していただければ個人・法人を問わず誰でもキャラクターを使用できるそうです。
夢は大きいですが、熊本の“くまモン”に匹敵するキャラクターとして成長していけるように私も微力ながら協力をさせていただきたいと思っています。
私自身もいずれ申請して使用させていただくつもりです♪

小西紀行(こにし・のりゆき)
opinionプロフィール
漫画家。長崎県島原市六ツ木町出身。
高校を卒業後に福岡の専門学校に入学。
1997年に“月刊少年ジャンプ”にて短編「E-CUFF」でデビュー(エカフというタイトルは「深江」を逆から読んだものである)。
以降は主に小学館発行の「コロコロコミック」及び、その系列誌で活躍。
代表作に「西遊記ヒーローGO空伝!」、「ゴゴゴ西遊記」、「戦コレ!」などがある。
2012年に連載を始めた漫画「妖怪ウォッチ」が話題となる。

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