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元気企業『やまさ海運株式会社』

南島原市有家町で海運業を起業

本社(伊達昌宏社長)は長崎市だがそのルーツは有家町。
同町出身の現会長・伊達秀則氏が海運事業の夢を抱き昭和20年8月15日の戦後に始めたものだ。
その後、同41年7月に長崎市に現会社を設立するまでは有家町を基点に長崎県の離島関係の海上輸送に専念し島原を中心に貨物運搬を行う内航海運業で地位を築いた。

その後も日本国の戦後の復興需要と高度成長の波にも乗って商圏を拡大「九州から関西まで貨物運送のエリアを拡大していった」(伊達明徳専務)。
この貨物事業は今も一部継承されているが、まだ全国に高速自動車道路網が未整備だった時代、鉄道輸送と並んで海運業は海上運送事業の花形だった。

“お客様ひとり一人を大切にする”海上運送業の原点を大切にしたおもてなしの気持ちが顧客の信頼を獲得しビジネスの拡大に大きな支えとなったのは間違いない。

以降も伊達会長の「無から有をつくりだすこと」「真(まこと)の歴史をお伝えすること」をモットーに平成8年からは「軍艦島遊覧航路」と「長崎港遊覧航路」の2旅客航路を新しく開設し一般観光客向けにも事業の幅を拡げている。

“故郷のために” 三池島原航路の事業を引き継ぐ

三池島原ライン(しまばら丸)

平成27年4月からは近年乗客減少で低迷していた三池島原航路の運航を島鉄高速船(島原鉄道)から引き継ぐ。
同航路はかつて島原・福岡間を結ぶゴールデンルートだったがその復権をめざし事業を引き継いだのが伊達秀則氏が会長を務めるこのやまさ海運だ。

もともと島原・三池航路は明治初期の頃から三井三池炭鉱の石炭積み出しにともなって賑わった140年余も続く九州の有力航路のひとつだった。
衆知のように明治9年には三井物産の支店も口之津に設立されている。

雲仙・普賢岳噴火災害が始まる前、平成初年までは年間10万人を優に超える乗客を運んでいたが、その後の噴火災害の影響と自動車社会の進展、さらには政府の高速道路料金割引制度などの影響もあって利用者が激減していた。

現在は毎日午前と午後に各2便を運航し、この高速船と西鉄の連携で2時間15分という短時間で島原と九州の中心・福岡市を結んでいる。
高速直行バスでも約3時間30分、島鉄・JRの鉄道乗継ぎ便でも約3時間という移動時間と比較しても格段に速い。
費用面でも経済的でビジネスでも観光でもお薦めのルートといえるだろう。

高齢ドライバーの事故が社会問題となり、一方では“時短”や“エコ”などの経済性や効率が優先されるようになった今日、ほとんど待ち時間なしで行ける高速船・連絡バス・鉄道の移動手段は今後さらに魅力を増していくだろう。

 

注目集める軍艦島クルーズと長崎港クルーズ

観光事業を展開する同社を一躍有名にしたのは軍艦島上陸周遊クルーズだ。
既述のように平成8年から始まっていた軍艦島周遊クルーズと長崎港めぐりだが、平成21年4月に軍艦島(端島炭鉱跡)への上陸が解禁されると以後上陸周遊クルーズは一躍脚光を浴びるようになった。

長崎港クルーズ(新観光丸)cハウステンボス/J-13919

さらに、現存する軍艦島の炭鉱遺構跡や廃墟それに台場跡や造船所ドッグなど長崎港の内外に点在する史跡や一連の構成資産が平成27年7月に「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録されるや内外から人気が沸騰しているという。

また、同社では平成27年度から専用のガイド役がついたこの軍艦島クルーズと長崎港クルーズを“ながさきヘリテージツーリズム”と銘打って学習と観光が一体となった修学旅行向けの学習体験コースをいち早く開設し、全国から注目を集めている。

過去の遺産を未来へ活かす

このように、かつて我国の文化と産業をリードしてきた地元長崎の過去から現在、未来を見すえ事業を展開する同社はユニークな注目企業といえるだろう。

「当社ではかつて海底炭鉱の人工島として知られるこの端島、高島炭鉱など三菱財閥が築いてきた長崎地区と三池炭鉱で繁栄を誇った三井財閥という長崎、福岡のかつての我が国産業の最先端エリアで事業をさせて頂いており、この面でも非常に恵まれている」(伊達専務)というように、同社には単なる海運業というワクを越えた歴史、文化の伝承者としての期待もかかる。

有明海を舞台に石炭産業で一時代を築き、「明治日本の産業革命遺産」の構成資産をもつ大牟田市と「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」候補や「世界ジオパーク」に指定されている島原半島を結ぶこの三池島原ラインの今後の復権にも注目していきたい。

やまさ海運株式会社
[本社長崎市古町1番地]

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