記事

OPINION「島原城薪能振興会事務局長 岩永泰賢」

島原は伝統芸能や文化財が数多く残る文化の宝庫

ご承知のように、島原は1616(元和2)年、松倉重政公の転封以来お城が築かれ半島の中心として、また我が国の代表的な城下町として繁栄してきました。

松倉,高力,松平,戸田,松平と続いた歴代島原藩のなかでも、特に古典文化に造詣が深かった(深溝)松平藩の初代藩主だった松平忠房公は能や狂言を愛し自らも舞って、慶事などには城内に町民や農民代表も招いて一緒に楽しんだ、という記録も残っているように能や狂言は地域に根ざしており、その歴史は400年にも及んでいます。

毎年10月に島原城で開催される島原城薪能はこの流れを今に伝えるものです。
島原では戦後の昭和30年代頃までは、町の旦那衆が教養のひとつとして能を習い、また棟梁や大工さん達も現場の祝事などでごく当たり前のように謡(うたい)をうたっていました。

そんな土地柄ですから、もともと島原という所は全国的にも能や狂言を始め文化の素養が高いところなんです。
実を言うと、雲仙・普賢岳の噴火以前から再三、島原にきて私の寺(護国寺)で幾度も落語会を開いてくれたあの故立川談志師匠も「島原は話しやすい」と言っていました。
聞き役の島原の人たちの反応や態度、古典芸能を愛する心を感じ文化レベルの高さをすごく気に入ってくれていたんですよ。

戦後の一時期、下火となっていたこの歴史と伝統のある古典芸能を継承していこうと、1983(昭和58)年に復活した島原城薪能も早いもので今年で34回目を迎えます。
私がこの島原城薪能の事務局長に任命されたのは12年前ですが、この間にもずいぶん色々と多くの試行錯誤を重ねました。

毎年の予算集めから、ご出演いただく各流派の方々との折衝、PRやスケジュール管理など…思い起こせばきりがありませんが、何とかやってこられたのも皆様のご協力あってのことと感謝しています。

その薪能も以前はまつりの一環とはいえ、金曜日開催が続いていました。
平成23年からは「しまばら温泉不知火まつり」と合体して土曜日の開催となり、また、賑わいの演出や話題づくりの意味もあって、私が事務局長に就任した年からは市民代表の「子ども狂言」も新たに薪能の出しものに加わることになりました。

最初は、プロたちが演じる古典芸能の舞台に素人の子どもを乗せるとは..とか様々な意見もあったんですが、これもいろいろと考え交渉を重ねた結果、今日のように舞台そのものを第一部、第二部に分け、しかも一部と二部の間には“神事・火入れの儀”を入れたりと随分工夫もしたんですよ。
ご承知のように、子ども狂言についてはスタート時から和泉流狂言方・野村万禄先生直々のご指導をいただくことができ、13年目を迎えた今日では全国的にもめずらしい取り組みとして注目を集めています。

700年という世界でも類をみないほどの長い歴史をもつ「能」、「狂言」という我が国の古典芸能を“無料”で、しかも薪能という形で城内の天守閣前で演じ続けるような例は他に聞いたことがありません。
観光客も含め毎年、市内外から1,300名もの観客を集め続けていることが何よりもこのことを裏付けています。

この伝統ある島原城薪能も今年から大きく変わります。
雲仙・普賢岳噴火災害25年の節目を迎える今年(「第37回しまばら温泉不知火まつり」(10月15/16日開催)は、昨年まで同時に開催していた「歴史パレード」と「ミス島原顕彰」を廃止し、15日(前夜祭)の「島原城薪能」の後は、同じ場所を利用して「しまばらガマダス阿波踊り大会」と「不知火奉納舞台」(いずれも16日)などを開催することになりました。

今年の薪能の目玉は、30数年ぶりに演じられる「観世流能」ですね。
従来、「金剛流」、「観世流」、「宝生流」の3つの流派が年ごとに一部は外部の参加者も交えて交互に演じていた舞台を、出演者26名全員が観世流のプロという豪華なものです。
演目も島原の湧水にも縁のある能「養老」をはじめ、舞囃子や仕舞などに加え、お馴染みの和泉流狂言「桶の酒」など、内容も充実しています。

島原という所は、その成り立ちの歴史も古く我が国の歴史の形成にも少なからぬ影響を与えたところです。
古典芸能以外にも、例えば九州でも有名だった当地域の石工(いしく)たちが技術の粋を集めて造った石橋など貴重な文化財が数多く残されています。

こんなにすばらしい歴史と文化に培われた土地を我々は今後も大切に引き継ぎ発展させていかねばならないと思っています。

岩永泰賢(いわなが たいけん)
プロフィール
島原市日蓮宗三十番神護国寺住職。島原市文化財保護審議委員。
昭和23年島原市生まれ、高校教諭を経て昭和49年、26才で護国寺住職に。
伝統仏教の僧侶として、現代に通用する仏教の教えや考え方を求めて経本やマンガの出版、講演会の他、落語会や各種コンサートを寺院で開催するなど従来のお寺のイメージを払拭した活動を行っている。
現在は島原城薪能や伝承芸能祭などを開催し地域文化の発展にも尽力しており、護国寺開山、日遥上人の故郷である韓国(慶南河東)の子孫達との相互交流を始め日韓友好にも力を入れている。

 

 

 

天守閣前で行われる薪能

関連記事

ページ上部へ戻る