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OPINION「南島原市口之津歴史民俗資料館長 原田建夫」

“顧客指向”の情熱ガイドで地元の情報を発信し続けたい

全国から当館を訪れて来られるお客様に説明をさせていただくのは楽しいですね。
こちらからの一方的な説明だけでなく、お客様とジョークも交えながら自由な雰囲気の中でいろいろとやりとりをしていると私自身も勉強になりますし若返りますよ。

「口之津」といってもご存じない方も全国には多いと思いますが、実は近世の歴史では重要なポジションを占めていたんですよ。
その口之津が南蛮貿易港として開港したのは長崎よりも古い永禄5年(1562)。
翌年、日本を訪れていたアルメイダ修道士がこの地でキリスト教の布教活動を始めると、またたく間に半島全体に拡大し領主の有馬義貞と子の晴信が改宗した後は日野江城を中心にたちまちキリシタン王国を築き上げたんです。

このことが後に、あの有名な「島原の乱(1637年)」にもつながっていくのですが、以降も明治期には対岸の三井三池炭鉱の海外向け石炭の積み出し港として長崎税関の支署が置かれ、同22年には博多、下関、小樽などとともに日本の特別輸出港に指定された時期もあったんですよ。

しかし、その裏には貧しい農家の娘などが“からゆきさん”としてこの地から東南アジアに送られていったというような悲しい出来事などもあったんですが、近世日本の歴史を語る上ではこの口之津は重要な地なんです。

私が当館の館長になったのは平成15年4月ですが、それまでは長崎県の教員として地元の小学校長を最後に退職するまでの38年間は教育にたずさわってきました。
その間、平成3年から3年間は県教育委員会の島原教育事務所にも勤務し島原の歴史なども勉強しましたね。

まあ、教育一筋に生きてきた私ですから現在の資料館の館長にさせていただいても特に違和感などはなかったですね。
ただ、教員生活が長かったとはいえ地元南島原市の歴史などは専門的に勉強していたわけでもなかったので、館長就任後の最初の1~2年は地元の歴史を一から勉強しましたよ。
現場で直接お客様に説明をするようになったのは3年目ぐらいからです。
やっぱり教壇生活38年のキャリアがそうさせるのでしょうかねえ…。
でも、実際に現場でご説明をさせて頂くことはすごく楽しいですよ。

説明に際しては私なりのポリシーがあります。
それは、以前に作家の井上ひさしさんが言っていたことでもあるのですが…、「難しいことをやさしく」、「やさしいことを深く」、「深いことを面白く」ということです。
説明するからには堅苦しい歴史的な話でもお客様にはリラックスした雰囲気の中で楽しく面白く聞いていただく事が大切だと思います。

そのせいかどうかは分かりませんが、おかげさまで当館の来訪者にはリピーターの方も多いのです。
“以前に聞き逃した所があるから”とか、“勉強になったから”とか…、4~5回も来られた方もおられるんですよ。
こんな感想をお聞きすると本当に“ガイド冥利”につきますね。

当館には年間に約1万2,000人~1万3,000人の方々が来られますが、春と秋の行楽シーズンは特に多く、1時間ほどかかる館内の説明をこの時期には多い日では一日に6~7回も行うことがあります。
シーズン以外でも週に5~6回は説明していますが、休館日の月曜日であっても事前にご予約があれば出てきて説明をおこなっていますよ。
当館には近世遺産の貴重な展示物も多いため、インターネットを見て来られる方も多いのですが、地元の南島原市や島原・雲仙市の旅館やホテルの推薦で、直接そこのマイクロバスの案内で来られる方が多いのも特徴です。
なかには、関東や関西方面からも学生さんや研究者の方などが「からゆきさん」のことを調べるために個人的に訪れてじっくり調べ物をして帰られるケースも多いですね。

先日はバチカン(ローマ)から当館宛てに島原の乱以前に揮毫された当時のキリシタン武士達42名の直筆の連判状の画像が送られてきました。
3ヵ年の貸し出し期限付きでお借りしたもので我が国唯一の貴重な書状ですが、当時の口之津の存在価値を証明する重要な史料として展示公開中です。
改めてバチカン側の当地へのご厚意に感謝しているところです。
私は今、県の文化財保護指導委員や南島原市世界遺産市民協働会議役員なども兼務していますが、今後も歴史好きの仲間と情報交換しながら地元の貴重な情報を積極的に発信していきたいと思っています。

原田建夫(はらだ・たてお)

プロフィール
1943年、現・南島原市南串山町生まれ。
教職員として38年間県内の学校を歴任し口之津第1小学校(現・南島原市立口之津小)校長を最後に退任。
以後、口之津歴史民俗資料館の館長に就任し、郷土の歴史研究と情報発信に努める。
また口之津史談会事務局長など各種協議会の役職も務め、口之津港開港450年を迎えた平成24年には記念事業実行委員会副会長を務め記念誌を執筆するなど著書や解説書も多い。
南島原市の歴史文化を継承する第一人者である。

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